里谷は便利で実用的な存在として、自分は家族、なかんづく母親から頼られている。そしてまるで呪いをかけられたように、自分もその役割に馴染んでいるのである。銀行のなかで、なまじ有能なために特定の部署がいつまでも放してくれない人材を間近にみている里谷は、その人々の立ち位置が、まるで家族における自分の立ち位置とそっくりであることに気づくのである。
「呪いをかけられている」とは言い得て妙で、一方的で強圧的な抑圧によって成り立っているものではないところにこの関係の複雑さがある。
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kogumarecord: 小山田容子『ちっちゃな頃からおばちゃんで』 -...
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